解体現場の「養生」とは?シート・幕それぞれの役割を解説

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解体工事を行う際、通常であれば「養生シート」というもので解体する建物をすっぽりと覆います。建物を取り囲むように設置した足場に張り付けて、シートの内側で発生する騒音や粉塵を外に出さないようにするのが目的であり、養生シートの大きな役目です。

養生シートにはいくつかの種類があり、目的によって使うものが変わってきます。また、シートとは別に「養生幕」といって、第三者の目につくような広告やPRなどを大々的に押し出すものもあります。

今回は、いわゆる「養生」と呼ばれるものの全般的な中身を細かく見ていきましょう。

養生シート

足場養生シート

建物を取り囲むように張り付けるのが「足場養生シート」です。一般的には、足場に取り付けて設置するもので、シートの種類にはいくつかあります。その特性を利用して、防音性などさまざまな安全性を高めることができます。ひとつひとつ見ていきましょう。

防音シート

普通の養生シートよりも厚みがって、防音性に特化したシートです。住宅密集地などで、防音性をさらに求める際に使います。通常の養生シートよりも約10〜20dBほど騒音を低下できるといわれています。

また、防音性を高めるため穴が全くあいていないので、細かな粉塵の飛散を抑えることもできます。

ただし、その分一切風も通さないため、風が強い地域などでは風に煽られて足場ごと崩れてしまう危険性が出るため、使い方に注意が必要です。後述するメッシュシートなどをうまく併用しましょう。

防炎シート

火がついても燃え広がりづらい性質を持っています。燃えにくい素材の「難焼性」、燃え続けない素材の「不燃シート」など、いくつかの種類に分かれています。

一般的な家屋の解体工事などではあまり用いられることはなく、主に鉄筋コンクリートの建物の解体で、電気などによる溶断を行うときに火花が飛び散ることを考えて用いられます。

メッシュシート

格子状に編まれたメッシュ生地でできていて、風通しがよいながらもある程度の大きさの粉塵やほこりは防ぐという特徴を持ちます。

丘の上や海の近くなど、風が強い地域での解体工事や、台風の多い季節・急な強風の日の工事に役立ち、光も通しやすいので、採光性にも優れています。

メッシュシートの基準

メッシュシートには社団法人仮設工業会による認定基準というものがあります。

たとえば、メッシュの網地の材料は「合成繊維でかつ難燃性のもの、または防炎加工を施したもの」「日本工業規格A8952(建築工事用シート)に定める防炎性を有するもの」といったものです。

また、はとめの材料にも、「強度・性能に均一性を持っていて、著しい経年劣化をきたさないもの」、さらに「縫込みロープを用いるものにあってはこれがナイロンなどの合成繊維のもの」という基準があります。

さらに構造に関しても、網地は「切れ・ほつれ、・ゆがみ・織りむらなどの使用上有害な欠点があってはならない」「メッシュシートの各辺の縁部は、はとめなどが簡単に外れない構造のものでなければならない」といったことも定められています。そのうえで、一般社団法人仮設工業会の試験をクリアしていることなども必要となります。

足場のメッシュシートの「1類・2類」とは

メッシュシートには、1類・2類という区別もあります。これは日本工業規格(JIS)の認定基準JIS A8952に基づいて、「引張強度・伸び・耐貫通性」というものの違いで分けられています。

1類は、メッシュシート単体で、つまりメッシュシートだけでの飛来落下物による危害防止に使用するもので、「引張強度68.6KN以上」、また「重量4.8kgの足場用鋼管を4mの高さから自由落下させ貫通しないこと」という基準を満たしたものです。

2類は、メッシュシートだけではなく金網などを併用して飛来落下物による危害防止に使用するもので、「引張強度0.59KN以上」、また「重量2.7kgの足場用鋼管を3mの高さから自由落下させ貫通しないこと」という基準を満たしたものです。

1類はシート単体で使用されてもこの強度が求められるほどなので、2類とかなりの差がある強さということになります。改修工事や戸建住宅向けとして使用されることが多いのは2類であり、逆にいえば一般的な工事の場合は2類の強度で十分であるということです。

仮囲い養生

足場養生シートとは少し違い、足場ではなくパイプを組んだものの上から養生シートを取り付けたり、フェンスやネット・ゲートを使用したりするのが「仮囲い養生」です。

仮囲い養生の役目は、足場養生のように「安全対策」「トラブル対策」というよりも、どちらかというと「工事現場の目印」です。現場全てをすっぽりと包むわけではないからです。こちらは工事範囲を囲ってわかりやすくしておくことで、近隣住民の侵入などのリスクを回避するための役割を果たしています。それゆえ、主にビルやマンションなど敷地が広い建物などに設置されることが多くなっています。

シート以外の養生方法

養生の言葉の意味は、もともと「建築工事などの、破損防止の手当」というもの。つまり養生とはシートで囲うことだけを指すものではなく、たとえば工事の通路や重機の搬入経路の確保のために鉄板を敷くとか、粉塵の飛散を抑えるために「水をまく」という行為も養生の一種といえます。

また、防音シートよりもさらに遮音性の高い「防音パネル」というものも用意されています。シートよりも厚い板状のもので、一般的な家屋の解体工事ではあまり使われませんが、大きな建築物など騒音が大きな工事においてよく使われます。

養生幕

養生シートと似たものに、「養生幕」というものもあります。

工事現場で、すっぽりと養生シートに包まれた建物の一部にメッセージや広告が貼られているのを見たことがないでしょうか?

あれが養生幕と呼ばれているものです。

ここまで説明してきたように、通常の養生シートが「工事現場を包み込んで、現場の安全確保と近隣とのトラブル回避を目的にしている」ことに対して、養生幕は主に広告や業者のPR文などがプリントされたものです。

養生幕を掲げる場合は、養生シートの上に張る場合が多いため、シートと幕は、基本的には全く違うものだと思って差し支えありません。

養生幕は、具体的に下記のような役割で用いられます。

宣伝・広告

解体業者の社名が大きくプリントされている幕が垂れ下がっているだけでも十分宣伝効果はありますが、他にも目を引く写真やイラストとともに魅力的なキャッチフレーズやPR文が載っていたら、新規顧客の獲得にもつながるかもしれませんね。

安全啓蒙

現場で働く作業員や、通行人などの第三者に、「頭上注意!」などのメッセージを掲げることで、安全に対する注意喚起をすることができて、リスクの回避にもつながるでしょう。

まとめ

・養生には「足場養生」「仮囲い養生」「シートなどを使わない養生」がある。また足場養生にも「防音シート」や「防炎シート」など、さまざまな特性を持ったシートを使い分けられる

・特に「メッシュシート」は、通常の養生シートが風で煽られるようなことがあるとき、重宝する

・養生シートとは別物で、養生幕というものもある。こちらは安全対策やトラブル回避の役割というよりは、宣伝広告やPRといったものを第三者に見せるためのものである

何気なく見ている養生も、これで「ただの工事の目印」ではなくなったはずです。業者がどんなことに配慮して現場の安全に気を配っているか、これで現場を見ればわかりますね。

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